叙述トリック概論を読んで気になった点について書いておく。 この論考ではトリックを「隠すトリック/騙すトリック」に二大別し、叙述トリックは後者に該当すると主張されている。 例えば密室トリックやアリバイトリックの一部のように、どうやって実現したのかわからないという状況を生じるものは、真相を不明にするための“隠すトリック”といえます。これに対して、叙述トリックは真相が不明な状況を生じるのではなく、何らかの形で“偽の真相”が暗示される、“騙すトリック”となります。 【略】 前述の“隠すトリック”では多くの場合、トリックの存在が明かされることは致命的な問題とはいえません。【略】 これに対して“騙すトリック”では、トリックが仕掛けられていることが見えてしまうと、“偽の真相”が十分に機能しなくなる(それが“偽の真相”であることが見えてしまう)おそれがあります。【略】 それを回避するために、叙述トリックは