広川太一郎さんが亡くなられた。享年69というのは、いかにもお若いし残念至極である。広川さんのお仕事全体に関しては詳しいデータサイトがあるので、そちらを参照していただくとして、ここでは筆者の極めて個人的なテレビ史に絡めて、幾つか代表的な吹替作品を紹介していきたいと思う。 そもそも筆者が「映画秘宝」誌で連載(現在は不定期掲載)していた吹替に関するコラムのタイトルは「とり・みきの広川太一郎主義」という。ではなぜ広川さんのお名前を戴いたのか。 吹替と字幕はどちらがいいか、などという不毛な論争をよく見かける。これはどちらにも一長一短あるというべきで、たとえば元の俳優の声を楽しみたい人は、それだけで吹替なんてNGだろう。いっぽう、セリフの情報量を考えると、字幕では吹替の半分も原語のニュアンスを伝えられないし(もちろん、だからこそ苦労の末、数々の名字幕も生まれたわけだが)また画面にも集中できない。純粋に