老後はホテルで優雅に暮らす――。日本でこう言われて思い浮かぶのは、帝国ホテルを「終(つい)の棲家」としていたオペラ歌手の藤原義江や女優の山田五十鈴、それに東京全日空ホテルで暮らしていた映画評論家の淀川長治といった超のつく有名人だ。 高級ホテルを“わが家”とすれば、その住人は毎日、濃密なサービスを受けることができる。ドアマンがひときわ丁寧に挨拶してくれるし、重い荷物はベルマンが持ってくれる。各種チケットの手配やレストランの予約も、コンシェルジェがきめ細かくやってくれる。部屋の掃除や片づけはルームメイドにお任せだ。 もちろん、ホテルが提供する高品質なサービスの対価はすこぶる高くつく。ホテル暮らしにはお金がかかるのだ。逆に言えば、ホテル暮らしをするのに有名人である必要はない。ある程度のお金さえあればよいのである。 空前の不況下にある日本では、資産格差が拡大し、むしろ新たな富裕層も増えている