「やっぱり低い椅子でやってみよう」と決心したことがあります。 ピアノの椅子は、たいてい高さを上下調節できるように出来ています。 グレン・グールドなどは、最初から固定しているものすごく低い椅子を持ち込んで録音していましたが、ほとんどのピアニストは会場においてある椅子を自分の都合のよい高さに調節して演奏します。 ある時期、音色のコントロールを、自分がイメージするように作れないことがありました。学生時代は「音が割れる(汚い)」「音が硬い」とよく指摘されていたのです。ある日、ホロヴィッツのVTRを見たら、結構低い椅子で弾いています。ホロヴィッツのような美しい音に憧れていた私は、当時理由も考えず早速低い椅子に変える決心をしました。 最初はかえって弾きにくかったのですが、慣れてくると不思議なことに音色がかなり変わってきました。音が硬くなる原因の一つが、実は「高すぎる椅子」にあったのです。 私は腕がひょ