バルカン半島の紛争に終止符を打つ合意をまとめた故リチャード・ホルブルック大使は、交渉は科学よりジャズに近い、と語っている。「あるテーマをもとに、アドリブをするようなものだ。目的地はわかっているが、どうすればそこに行けるかはわからない。決して直線的には進まない」(「オリエンテーション カオスを受け入れよう」より) 『交渉は創造である ハーバードビジネススクール特別講義』(マイケル ウィーラー著、土方奈美訳、文藝春秋)の序文で引用されているこの一節を通じ、著者はなにを伝えようとしているのでしょうか? 答えは「交渉の達人は臨機応変で、アドリブ(即興演奏)が得意だ」ということ。 交渉をテーマにした本で、アドリブの必要性に触れたものはほとんどないはずです。しかし著者によれば、現実的に交渉がうまくいっていないときには、気の利いた提案をしたり、ジョークをいったり、ときには相手を挑発することも必要。場合に