雪国から好選手が生まれないという野球界の常識は、もはや過去のものになろうとしている。花巻東高校から菊池雄星(西武)や大谷翔平(日本ハム)が現われ、後輩たちがそれに続こうとしている。その立役者が同校野球部の佐々木洋監督だ。佐々木が起こしたみちのくの野球革命とは──。 今から3年前の2012年7月中旬、まだ花巻東高校3年生だった大谷翔平(日本ハム)が岩手県大会で成し遂げた偉業は、全国のニュースで大きな驚きとともに伝えられた。プロでもほとんどの投手が投げられない球速160kmという領域に、18歳の少年がたどり着いたからだ。 周囲の喧騒をよそに、監督の佐々木洋は淡々と現実を受け止めていた。 「大谷はボールを投げていたらたまたま160kmが出たのではなく、160kmを投げようと思って出した」 身長193cm、体重90kgの大谷が投手として恵まれた体躯を誇っていることに疑いの余地はない。だが、こ