「おれはおまえの文章が好きだ。才能があるぞ」。中学校のとき、先生は私の作文をそんなふうにほめてくれました。作文の内容は忘れましたが、先生の言葉の内容だけはよく覚えています。何となく「もの書き」になりたいと思っていた私は、「夢を捨てなくていいんだ」と、自信を持つことができました。 そのころの私は、勉強も運動も真ん中の下くらい。「ほかの人とちがう人でありたい」と考えているのに、「ちがいを出すにはどうすればいいの」と迷っていました。「あまりちがいすぎてもこわいな」とも思っていて、「だれか答えを教えて」という気持ちでした。先生がほめてくれたのは、そんなときです。 もし前日に私がいなくなっていたら、こんなすばらしい瞬間(しゅんかん)に出会えませんでした。こうした瞬間が来るのは明日かもしれないし、10年後かもしれません。でも、君たちより何十年も長く生きてきた大人として、これだけは言えます。「すばらしい