社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学 作者:ジョナサン・ハイト 紀伊國屋書店 Amazon 〔ジョシュア・グリーンによる「カントの魂の密かなジョーク」論文に関して〕 これは統合知の格好の例である。ウィルソンは一九七五年に、「倫理学はすぐに<生物化>され、脳における<情動センター>の活動を解釈するものとして再構築されるだろう」と予言したが、この考えは、当時の支配的な見方に真っ向から逆らうものだった。何しろコールバーグらの心理学者によって、倫理学の中心は情動ではなく嗜好であるとされていた頃のことだ。当時の政治的な風潮は、進化思考が、人間の行動を探求するための妥当な方法だとあえて示唆するウィルソンのような人物に対し、きわめて辛辣だった。 しかし、それから三十三年後にグリーンの論文が執筆される頃には、すべてが変わっていた。多くの研究分野の科学者は、情動を含めた無意識的なプ