「鉄は国家なり」。日本経済の根幹を担ってきた鉄鋼業界に、今、構造転換が起きつつある。 10月、新日本製鉄など日本の鉄鋼大手5社は、韓国鉄鋼最大手ポスコと伊藤忠商事と組み、ブラジルの鉄鉱石鉱山会社ナミザ社の権益40%を落札した。落札額は3120億円。2009年から鉄鉱石を引き取り、ナミザの拡張が完了する13年には、日本の鉄鉱石輸入量の1割弱に当たる年1370万トンを購入する。 これまで日本の鉄鋼大手は「鉱山経営は本業ではない」(高炉首脳)との考えから、原料権益の取得に積極的ではなかった。だが、過去最大規模の鉄鋼原料投資となるナミザ権益獲得に今春から動き出し、実現。日本の鉄鋼業界は、川上重視へと大きな一歩を踏み出した。日本鉄鋼連盟の宗岡正二会長(新日鉄社長)は「今後も有望な案件があれば押さえていきたい」と、さらなる川上権益の獲得に意欲をにじませた。 転換の背景にあるのは川上に当たる鉱山会