フランス社会の変容 フランス東北部、ルクセンブルクとの国境近くに「天使の谷」と呼ばれる地区がある。ロマンチックな響きとは裏腹に、一帯に広がるのは欧州有数規模の工場群だ。鉄鋼世界最大手アルセロール・ミッタルの製鉄所や関連企業が集中し、灰色の街の真ん中に高炉がそびえ立つ。 名称の由来は、天使のように清い人々が暮らすからでも、住民の夢枕に天使が現れたからでもない。単に、周辺自治体名の多くが「アンジュ」(Ange=フランス語で天使)の語尾を持つからに過ぎない。製鉄所の名称は「フロランジュ」、管轄の市は「アイアンジュ」、といった具合である。 フロランジュ製鉄所は2011年に操業を事実上停止した。以後、この谷は雇用喪失と人口流出にあえぐ。フランス経済の行き詰まりと格差を象徴する地方として、メディアにもしばしば登場する。 今年2月に訪れた現地には、予想通りの閉塞感、寂寥感が漂っていた。地元商店街では閉店
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