鳥海修氏は、かつて紅蘭楷書を「好んで愛でるように見ていた」そうだ。「良いとされる書体を深く見ることで、自分のなかに基準のようなものが生まれた」という。同感である。それほど私たちの心をとらえた書体である。 紅蘭細楷書の開発は、上海の代表的な印刷会社が写研製の写植機を導入することにともない、今まで使っていた書体を使えるように、写研の写植機に搭載する文字盤を作ってほしいということからはじまったと聞いている。 当初中国楷体と呼んでいたのが、のちに「紅蘭細楷書」と名付けられている。中国楷体(楷書体)の原字はその印刷会社から提供を受けた。ほかに倣宋体(宋朝体)、宋体(明朝体)、黒体(ゴシック体)があった。これらが、どのような経緯で、どのような契約で、写研の中国語文字盤として市販されるようになったのかは知らない。 写研の中国語文字盤には、簡体字(文字盤コード:PRC)と繁体字(文字盤コード:CHA)があ