小さい頃、数ヶ月に一回くらいの割合で訪ねてきて、家の前でちょっと世間話をして帰っていくおばさんがいた。玄関ベルの音が鳴り響き、そのおばさんがいることがわかると、親は僕に応対を任せる。おばさんはいつも、「大きくなったねー」とか「今日もサッカーの練習?えらいねー」などと、たまに会う親戚のようなことをいつも言った。そしてそこからほんの少し、僕に質問をしたり、あるいはおばさんの話があったり、ゴミ出しついでにお隣さんと最近の出来事を話し合うようなやり取りがあったのち、おばさんは冊子を取り出し、そこから一節を引用し、「りょうへいくんが幸せな人生を送れますように」と締めくくり、またお元気で、となる。 おばさんがとある宗教団体の会員で、いつもその団体の勧誘用冊子を渡しにきているということがわかったのはもう少し僕が大人になってからのこと。たぶん中学生とか、そのあたり。結局、大学院生になり実家を出るまでの間、