世界の未来を創造する研究に資金を惜しまぬ組織としては、アメリカの国防総省国防先端技術開発局(DARPA)に勝る組織はないだろう。DARPAは常に20年から50年先の世界を見据え、未来社会にとって最も強力な武器となる新技術の開発に潤沢な資金を提供している。例えば1960年代の初頭、まだコンピュータ・サイエンスが学問分野としても誕生していないときに、将来のコンピュータ社会を具体化するビジョンの下、新たなコンピュータのネットワーク社会を描いていた。 <未来の戦闘員を生み出すための研究開発> 当時、DARPAの前身組織であるコマンド・アンド・コントロール・リサーチ部門の責任者であったリック・リダー氏は全米の大学や研究機関、政府の主要部門を結ぶ「アルパネット」と名づけたコンピュータのネットワーム網を立ち上げる準備に着手。60年代の後半になると、DARPAの資金供用を受けた企業や大学の研究者たちがこぞ