・新文章讀本 川端康成が大正から昭和初期にかけて書いた文芸時評と文章論をまとめた本だから「新」とついているけれども古典である。当時川端が高く評価していた「現代」作家の徳田秋声、泉鏡花、葛西善蔵、志賀直哉、横光利一、谷崎潤一郎、佐藤春夫、里見弴らの文章が引用されて、良い文章とはこうあるべきという要点が語られる。 「俗に芸術的文章と実用的文章と二つに区別がありようにいわれるが、これは果たして如何であろうか。結論を先にいえば、私はその差別を認めぬ。先ののべたように、文章とは、感動の発する儘に、自己の思うことを素直に簡潔に解り易くのべたものを良しとする。古来文章の規範として「華を去り実に就く」といわれたのも、このところであろうか。」 「私は芸術的文章の秘密はわからないので、わかりやすい実用文のコツを述べます」なんて言い訳で始まる文章指南書も多いのだが、さすがノーベル文学賞はそんなことはいわないので