なぜ他の国々とは異なって19世紀ドイツでは,教養なるものが大きな意味を持ったのか.バッハ復興運動やアマチュア音楽活動の展開,音楽作法の成立などを考証し,音楽が社会的に持った意味を究明.従来の緩急にはない全く新しい視点から,教養の正体を浮彫りにする.音楽学の素養をもつ著者にして初めて可能となったスケールの大きな音楽社会学の達成. ■著者からのメッセージ 教養とは何か.この問いはこれまでにも数多くあったが,何か人格形成の一助となるものというイメージ以上の答えは得られなかったように思う.本書は,これまでの問いとは別の方向から,教養というものがよく分からないままに漠然と高く評価されてきたことの意味を問い直そうというものである.その曖昧な高い価値を解き明かそうとするときに,音楽芸術が鍵として浮かび上がる.本書の舞台となる19世紀ドイツでは,他国にないほど教養がもてはやされ,その一環としてアマチュア音