1573年晩夏 小谷城近くの蔵御前山砦にいた。 時は戦国、夏、昼下がり。 謀反で捕まった羽柴秀吉という、前代未聞のありえない状況に際して、オババと意見が一致してしまった。 嫁と姑だから、意見が一致って、普通はないから。 そんな常識をくつがえすような事態、いっちゃなんだか江戸の昔からありえんことで、まして、常識外のオババと、普通の一般主婦である、ほんと普通な私が一致ですと? ない! 「よし!」と、オババはニヤリとした。 片方の頬をあげた苦笑いのような、ハリソン・フォード得意の笑顔だけど、オババが乗り移った40代のカネのお人好しな顔に、これほど似合わない顔もなくって、 だってね、あれはある程度の年輪を重ねた魅力というか。 最高に人の良さそうな、ひらぺったい顔族典型のカネだと、逆に、底意地が悪くみえてしまって。 なんちゅうの、井戸端会議で、そこにいない人の悪口言ってるような、人相の悪い顔になって