ロック歌手の忌野清志郎さんが58歳で亡くなって、2日で10年がたった。大震災が発生しても、世界情勢が悪化しても、いつも彼の歌声はそばにあった。清志郎さんが今生きていたら、どんなメッセージを発するのだろう。【鈴木梢】 実感したことを歌うだけ 清志郎さんは、反戦反核や反原発を訴えた。彼は社会を変えたかったのだろうか--。清志郎さんの著書「瀕死(ひんし)の双六(すごろく)問屋」に解説を書いた芥川賞作家でミュージシャンの町田康さん(57)は、その問いを否定した。 「あくまでもそれらの訴えは、個人的な言葉だったんじゃないでしょうか。社会に向けた運動だとか、世界を変革する意図ではなく、どこまでいっても一人の人間として実感したことを歌っただけ。重要なのは、言葉に対して常に誠実だったことです」