まだ作家でもなんでもない人の原稿なんですけど」 神崎編集長、原稿を受け取るが。 「これをどうする?」 「本にしたいです」 (すかさず)「初版何部だ」 「……3000部」 「200万円の赤字だな」 火曜9時ドラマ『ゴーストライター』(フジテレビ系列)のワンシーンだ。 「わかってます。でも一度だけ自分の作りたい本を作るチャンスをください。お願いします」 頭を下げる。 「まだわからないのか。 本なんて売れないんだよ」 神崎編集長、机の上の本を取り、投げる。 「これも」 もう一冊つかみ投げる。 「これも」 投げる。 「これも、これも、これも」 数冊を鷲掴みにして投げる。ばっさああっ。 「これも。 ぜんぶ赤字だ」 このへんでドラマを見ていた出版関係者、シビアな現実描写に涙目である。 だが、まだまだ。 神崎編集長、おいうちをかける。 「すべての赤字を(遠野リサの本を持って)この一冊の本で回収している」