「ちょっとあなた、近頃は暇を持て余してるのかしりませんけれど、ちょっと生活が怠惰すぎやしませんか。」 「はい?誰なんすか、あんた。そんなの俺の勝手じゃないですか。」 名は直哉。35歳独身。中学高校大学と学業成績優秀。さらに小学校から続けていた野球でも甲子園出場経験ありと、文武両道とはこの男の為に用意された言葉のようなものである。 そんな学生時代を過ごした直哉は、エスカレーター式とでも言うように一流企業に就職し、さらにはその経験を活かし独立。 35まで超多忙な日々を送った甲斐あって、直哉の預金通帳には、直哉の生活スタイルを考慮すれば、一生働く必要のない残高が記されている。 というのも直哉、就職してからの13年間、仕事中心の生活を送っていたため、学生時代打ち込んだ野球はやめ、他に趣味と呼べるような類のものを始めようともしなかった。野菜生活ならぬ仕事生活である。生活の為に仕事をするのではなく、仕