「いいですよ」 「えっ、いいんですか?」 思わず聞き返した。「今はちょっと……」と断られるのは覚悟の上。松井とはその瞬間がほぼ初対面だったのである。 答えを濁されたら、「明日はどうか? 明後日は?」と別の選択肢を示しながら、都合のつくタイミングを聞くつもりだったが、想定問答はまったく用をなさず、戸惑っているうちに、「今からケージ(室内打撃練習場)に行かなければならないので、その後はどうですか?」と松井。 果たして練習後、戻ってきた彼の方から声をかけてきた。 「やりましょうか」 椅子を勧められ、15分弱向き合った。ただ、初顔の記者をさらりと受け入れるとは――と、最後まで狐につままれたような気分は消えなかった。 その後も松井とは、多くの時間を過ごしたわけではない。むしろ、わずかと言っていい。それでも顔を合わせれば、眉を上げて「オッ、久しぶり」という表情をこちらに向け、「ちょっといいですか?」と
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