平成に入って10年余り過ぎた1999(平成11)年。社会の信頼が根本から崩壊しかねない事件の発覚、発生が相次いだ。深刻な問題を引き起こしたのは、神奈川県警。現職の警察官が殺人、収賄、窃盗、強制わいせつなどの罪を犯し、県警は組織ぐるみで警官の覚醒剤使用事件を握りつぶしていた。未曽有の不祥事は、なぜ起き、何を残したのか。不祥事を隠そうとする県警上層部と記者の間では、どんなせめぎ合いがあったのか。組織と個人、キャリアとノンキャリア、捜査当局とマスコミ… 一連の不祥事を取材した記者が今、あの時を振り返る。(神奈川新聞記者・渋谷文彦) 「取材に行っても、2人とも否定しますよ。一体何のことかと言われるかもしれない。裏は取れませんよ」 1999年9月4日、神奈川県警察本部。ある県警幹部が発した言葉に、思わず息をのんだ。 2人とは、相模原南署の元巡査長と女子大生。県警が隠していた元巡査長による不祥事の実態
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