ニューオーリンズの日刊紙『ザ・タイムズ・ピカユーン』に勤務していた1997年に地球規模の魚類供給危機に関する記事を書いてピューリッツァー賞を受賞した著者は、2006年に独立し、夕食の支度を担当するようになった。そのとき苦労したのが、家族全員を満足させる献立。息子は辛い物が好きでファストフードは食べない。娘は平板な味の白っぽい食べ物一辺倒。同じ親から生まれたのに、なぜ子どもたちの嗜好は、これほどにまで異なるのだろうか。そう思いを巡らせた作者は、ジャーナリストの好奇心をもって味の探求に乗り出した。 しかし、味の探求は、思っていたより簡単ではなかった。というのは、味覚は古代ギリシアの時代から、五感のなかでもっとも卑しい感覚として軽視されてきたうえ、視覚や聴覚や触覚とは違って主観的であり、個人差が大きいため捉えがたいのだ。とはいえ、近年の科学の発達にともない、こうした状況も変わりつつある。1998