「媚態とは、一元的の自己が自己に對して異性を措定し、自己と異性の間に可能的關係を構成する二元的態度である。さうして「いき」のうちに見られる「なまめかしさ」「つやつぽさ」「色氣」などはすべてこの二元的可能性を基礎とする緊張に外ならない。いはゆる「上品」はこの二元性の缺乏を示してゐる。さうしてこの二元的可能性は媚態の原本的存在規定であつて、異性が完全なる合同を遂げて緊張性を失ふ場合には媚態はおのづから消滅する」 これは、九鬼周造の『「いき」の構造』(1930年)の一節です。とても哲学的です。それにしても、よくもここまで上品に言えるものだと感心します。言っていることは、何のことはない、男女の仲のことなのですから。 なんだこれは、読みにくい。わけがわからない。また、自分は忙しいんだ、とおっしゃる方のために、わたしがとても粗雑に要約してみます。 媚態とはこういうものです。つまり、気になっている異性が