大東京小学校に向かう通学の道が、小学5年生のサトシにはとても苦痛だった。特にきょうのような火曜日の朝は…。担任のミチコ先生の面談があり、「自尊メーター」でチェックを受ける日だからだ。うなだれて教室に入ると、クラスメートたちは楽しげに自慢話をしあっている。 「オレ、親に大人買いさせてレアカード100枚ゲットしたぜ。これで最強カードマスターだぜ」 「ウチなんか、200色入り色鉛筆セット買ったわよ。これでピカソを超えるわ」 サトシはさらに憂鬱になった。サトシは自慢どころか、自分を好きにさえなれない少年だった。都教委の推進する 「自尊教育」 の落ちこぼれだった。 面談が始まった。ひとりずつ面談室に呼ばれては自信に満ちた顔で戻ってくる。サトシは時間の流れが止まらないものかと願ったが、イヤな順番ほど早く巡ってくる。問題なく面談を終えたリョウが、肩をいからせながら教室に戻るなり「サトシの番だ」とアゴでド