12月も後半のとある夜。巡はバイトを終えた体を公園のベンチにもたれさせ、パン屋で購入した値引きものの激辛カレーパンを囓っていた。疲労で表情もない巡は、眼前を横切る楽しそうな親子連れを眺めながら、天涯孤独の身の辛さを思う。世話になった保母からの「お前の家族になってくれる人がきっと見つかる、そしたらその人を守っておやり」という別れ際の言葉に、いま力無く溜息をつくしかなかった。ゴミ箱めがけて投げたコーヒー缶は外れてそばのチンピラに当たり、因縁をつけられた巡は慌てて土下座するが、3人に囲まれてフルボッコにされてしまう。 そのとき通りかかった一人の婦人が、顎と股間を狙い澄ました不意打ちでチンピラ全員を倒すと、巡を抱え起こして安全な路地へと連れ去った。「ヒカルに教わっといてよかったわ」と微笑みながら、巡の顔をハンカチでぬぐう婦人は、ふと少年の顔と名前に引っかかる。ややあって婦人が顔を伏せがちに1つ1つ