葛西薫さんとのトークは、とても楽しかった。 なんてったって「文字の人」だから、広告の話より先に文字の話からはじまったんだけど、やっぱりすごいね。 「近ごろの若いデザイナーは、なんで文章を中ゴチで組むんでしょうね?」 とぼくが言ったら、 「明朝のナマっぽい感じがいやなんじゃないですか。抽象化を進めて無機的な感じにしたいというか」 という答えが、すぐに返ってきた。 さすがというか、なるほどというか。 たしかに明朝は、肉声の感じがする。その点、太ゴチはだみ声っぽいけれど、中ゴチは無機的である。 手書きの文字→明朝→中ゴチ……という順序で、文字から音が消えていくようだ。 いまの若い人は、きっと文字から音が聞こえるのは、うるさいとか、ダサイとか感じるのかもしれない。 でも、おれはそんなのいやだね、と思って手元にあった「クリエイターズ・トーク」のチラシを見たら、明朝は一つもない。ぜんぶ中ゴチではないか