「あわわ、あの請求書、どこにやったっけー」。僕は杉浦直人。この会社に入って3年目の営業だけど、忙しさのあまり、机の上の整理整頓がまったくできていない。今日提出しなくちゃいけない請求書を探して、右往左往しているところ。あー、こういう時に限ってなかなか出てこないんだよな。こんなんじゃ、昨日は飲まずに机の上を整理していたほうがよかったよ。実家の姉さんからの手紙もどこかに混ざってしまった。姉さん、反省しています……。 二日酔いにイライラしながら直人がガサガサ探している脇を、上司の稲葉博が通り過ぎる。「おい、どうした? また何か探してるのか?」。昨日も遅くまで客先でプレゼンテーションし、その後は直人と2人で終電まで飲んでいたとは思えないほど、稲葉は普段通りだった。黒のスーツに身を固め、いつでも臨戦態勢。さすがは、女性社員から“ダンディー”と呼ばれるだけのことはある。 一緒に飲んでたのに稲葉さんは元気