五輪エンブレム問題で改めて考えさせられたデザインにおけるオリジナリティー。その意義やデザイン界が抱える課題について、美術評論家で多摩美術大教授の椹木野衣さんに聞いた。 ――東京五輪エンブレム問題をどう見たのか。美術の文脈に絡めて、お聞かせください。 サントリーの景品デザインの取り下げもあったので、佐野研二郎さん個人にいろいろ問題があったとは思うが、根本的には日本のデザイン界の問題ととらえている。 オリジナリティー、特に作品の固有性みたいなものは、美術の世界で出てきたものだと思うが、美術でさえ、オリジナリティーという考え方が重視されるようになったのは近代以降で、それ以前はさして重んじられていなかったと思う。中世にまでさかのぼると、作者名なんて残っていないし、ギリシャ・ローマにしても、作者が誰かなど重視されていなかった。ルネサンス以降、巨匠の名前を多く見かけるようになるが、それでさえ工房制をと