絵を初めた人が「ものの見方が違ってきたわ!」と言い、 日常生活の中で、ものを見る見方と、表現するための見方と は違うんだということに、何となく気が付いた頃から、描く ことが喜びや楽しみから、苦労や苦痛に変わり始めるのです。 眼の方は、腕が上がるスピードよりも早く、より上を求め るようになり、描いても描いてもちっとも満足しないという ジレンマに陥る時期が、誰にでもあります。 ここを通り越せるか否かが、絵が持っている魅力に近づけ るかどうかの第一関門なのです(何にでも共通することだと 思うのですが・・・)。 筆を持つのが苦痛に感じている自分の中に、画面に向かう ことを促し、人を苦しめることが喜びであるサド候爵的性格 のもう一人の自分をしっかり育てることが、表現する者には とても大切なことなのです。 描き続ける中で、苦しみが再び楽しみに変わるという瞬間 に出会える権利を侯爵は与えてくれるのです。