人権問題の最前線で戦う活動家が、そのまなざしで動物たちの現状を見つめたら、どのような展望が開けるか――。生田武志氏の新刊『いのちへの礼儀―国家・資本・家族の変容と動物たち』(筑摩書房、2019年)は、そのような試みが持ちうる一つの可能性を示している。本書は大阪・釜ヶ崎の日雇労働者・野宿者支援活動に長年取り組んできた著者が、《国家・資本・家族》という三極構造の変容を軸に、人間動物関係の歴史と現状を分析し、あるべき未来を模索する意欲作である。 議論の出発点は人間による動物の扱いをめぐる古典的な問いにまとめられる――なぜ私たちは一方を愛し、他方を食べるのか。すなわち私たちは犬や猫といったペットを愛しつつ、牛や豚や鶏といった家畜たちを食べる。この当然視されている、しかしよく考えれば奇妙というべき動物たちとの関係に著者は改めて光を当て、犬猫の社会的な位置づけの変遷や肉食の文化史を追うことで、動物たち