「コンセプト」の一語は、古くも新しい概念として問い直すことができるのではないか。その概念は、アート領域における20世紀のデュシャンに端を発するかたちで、表現媒体やジャンルを超える拡がりを獲得してきた。表現活動でも事業的な活動でも「コンセプチュアルであること」が価値を帯びるなか、現在においてはコンセプトを表現するための技術的な手法がますます安価かつ簡便なものになっている。一例だが、生成AIが登場したことで、何らかのインプットを何らかのアウトプットへと変化させることが極めて手軽になったため、相対的なコンセプトの価値は高まり続けてもいるだろう。 今回はSF作家の津久井五月氏に寄稿を依頼し、コンセプト概念についてエッセイのかたちで思索を深めていただいた。建築設計の専門的な背景をもつ氏は『コルヌトピア』という都市SFでデビューを飾ったのち、アートやデザイン領域での制作にも接するなかで、SFのエッセン