スイス人音楽学者のシルヴァン・ギニャール博士(Silvan Guignard/54歳)は「青い目の琵琶法師」とも呼ばれる。今年の6月5日に逝去した人間国宝の琵琶奏者、山崎旭翠(ぎょくすい)に23年間師事した唯一の外国人で、筑前琵琶の演奏家。雅号は旭西(きょくさい)。 ギニャール氏は元々ショパンの専門家であり、西欧の中世音楽の研究なども手掛けていた音楽学者だ。しかし、チューリヒ大学で民俗音楽を教わった日本人の恩師、音楽学者の前田昭雄先生の手ほどきで邦楽に興味を持ち、来日したのが琵琶への出会いの第一歩だった。 「よろしかったら、ちょっと音色を聞きましょうか」とシャンシャンシャン「これは2月18日…」と越前琵琶で『平家物語』の『那須与一』を奏でてくれた。日本語で行われたインタビューではアクセントがあるのに、「語り」では少しもない。低く、通る貫禄のある声に響きの深い琵琶の音が交わる。ドラマチックな