■現代社会のひずみ 丹念に 都会のオフィスビル、広大な工場、罵声が飛び交うブラック企業…。20~30代の新鋭作家たちが現代の職場を丹念に描き、話題を呼んでいる。新卒学生の就職難が深刻化し、非正規雇用の増加などで働き方の多様化も進む。社会のひずみが顕在化する職場で得た実感を、自由なスタイルでつづる。(海老沢類) 「素直に『自分にはこう見えた』という感じで書いた。読者の方のどんな反応もすべてうれしい」。そう声を弾ませるのは、初の小説集『スタッキング可能』(河出書房新社)が第56回三島由紀夫賞候補に選ばれた松田青子(あおこ)さん(33)。単行本の帯には気鋭の作家の推薦文が並び、部数も5刷2万部に達した。 表題作は、とあるオフィスビルの日常をフロア別に複数の視点で描く。登場人物はA山、B田、C村…と記号のように記され、フロアや部署が違っても時折似た言動を繰り返す。〈こんなにみんな同じだとは思わなか