ある時、ある場所で死を賭けた壮絶な戦いが繰り広げられていた。色づき始めたカエデの根本、その茂みにカムイは敵の気配を感じ取っていた。 (距離は三十メートルほどか、敵は少なくとも3名はいる・・・しかも、恐ろしく腕の立つ連中ばかりだ。空蝉も逆歩も変身も奴らには通用しない) すべてに静寂が支配していた。かすかに聞こえる風の音、木の葉のざわめき、小川のせせらぎ・・・それらに五感のすべてを集中して時間だけが過ぎ去っていく。一瞬なりとも気を緩めてはならない。茂みに残されたわだち、風に混じるかすかな気配、それら自然の中に漂う敵のかすかな気配を察知するのだ。・・・それは、忍びの術を会得し、感覚を異常なまでに研ぎすました者だけが感じることの出来る特別な能力なのだ。この非情な空間で生き延びることは並み大抵のことではない。集中力の途切れた時が死ぬ時だ。そう、先にしびれを切らした方が負ける。彼にとって、美しい小鳥