すごいものを見てしまった。先日、小説の取材でちょっと上京したのだが、その折に渋谷のシネマヴェーラで封印映画の「スパルタの海」を見てきた。 これは83年に戸塚ヨットスクールのスパルタ教育について映画化したもので、ちょうど公開となったところで相撲部屋よろしく暴行致死事件が明るみになってお蔵入りとなった作品である。 戸塚ヨットスクールを支援している団体がこの映画の権利を東宝東和から買い、DVDを通販で売っているという話を聞き、正直なところスパルタ教育が好きな都知事イズムに染まった人達向けのくだらないプロパガンダ映画だと思っていたのだが、それは大きな間違いであった。人の価値観を揺さぶる薫り高い文学性を感じさせる怪作品であった。おそらくそのノリは「シグルイ」や梶原一騎のカラテ作品や「愛と誠」、それにリチャード・バックの「かもめのジョナサン」のような現代社会とは相容れない(同時に人を魅了してやまない)