京都駅を発つ新幹線の窓ガラスに映るシートに深く身を沈めた半透明の俺の姿はまるでスキャンされた胎児の亡骸。俺は何に対してというわけでもなく舌打ちし、前の座席の背から引き出したテーブルの上に置いたノートパソコンで大人向けDVDを観始めた。 板垣あずさ。この女のスレンダーな肢体が俺を昂らせたことはない。この女の声は遠くの町で鳴る調子のずれた太鼓を連想させた。あばずれ!やくたたず!罵りの言葉を投げつけたあとで停止ボタンを押しヘッドフォンをパソコンから引き抜く。引き抜こうとした。ヘッドホォンとパソコンをへその緒のように結んでいるはずのコードの先端はシートの下で金属特有の冷ややかな光を放っていた。 通路を挟んだ向こう側にいるカップルが俺を見る瞳のなかに俺は俺への憐れみを発見する。新幹線に乗って列島を横に斬るインポに同情はいらない。「どうしてたたなくなったのだろう?」。俺は国道に転がっているパンダの轢死