北村紗衣『批評の教室』は、批評という営みの敷居を下げる本だ。「チョウのように読み、ハチのように書く」という副題の通り、本書は芸術作品(主には文学、映画、劇作品が参照される)について軽やかに読解し、クリティカルに論じる手引きとなっている。 実践編の第四章を除けば、本書は「精読する」「分析する」「書く」という三章立てになっており、それぞれにおいてさまざまなノウハウが紹介される。特に、第二章「分析する」では、物語のタイムラインや関連作品のチャートを作るといった具体的な作業が実例とともに紹介されるため、読者は実際の手の動かし方から作品分析を学べる。単純化を恐れることなく言ってしまえば、それらノウハウは〈じっくり鑑賞し、根気強く情報を集め、シャキッと書け〉とでもいうべき方針で一貫しており、読者はそこで規範とされる「じっくり」「根気強く」「シャキッと」とはどういうことなのかを教えられることとなる。 こ