松江泰治はこれまで世界中の地表—山岳、砂漠、森、都市—を俯瞰的な視点で捉えてきました。光が地表を均一に照らし出す時間帯に撮影することで、画面から影や地平線が排され、情緒性は注意深く削ぎ落とされています。見る程に細部がたち現れる精緻な画面は、人間的なまなざしの不確実さと不思議さをあらためて体験させてくれます。 松江は世界各地を車で移動し写真の制作を続け、2004年からカラー作品を発表しました。これまでの松江作品はタイトルにシティ・コードが付けられた都市を被写体にした「CC」シリーズと、ALPSなどの地名が付けられた「gazetteer」(地名辞典の意)のシリーズに大別することができますが、新たな展開として2010年から発表された映像作品があります。一見静止画のように見えるこうした作品は一定時間見続けると、細部の変化によって動画だと分かるような「動く写真」とも評されるものです。 本展では、新作