人は脳からの信号を下半身に伝える脊髄を損傷すると、脳と脚に問題がなくても歩行障害が生じる。こうした場合に、脳から腕の筋肉へ伝えられる信号をコンピューターで読み取り、その信号に合わせて腰髄を磁気で刺激して、脚の歩行運動パターンを自分の意思で制御することに、生理学研究所(愛知県岡崎市)の西村幸男(ゆきお)准教授らが世界で初めて成功した。 脊髄の一部を迂回(うかい)して、人工的に脳と腰髄にある歩行中枢をコンピューターなどでつなぐ方式を実現したもので、手術に頼らない下半身まひの治療法として期待される。生理学研究所の笹田周作研究員(現・相模女子大学講師)や福島県立医科大学の宇川義一教授、千葉大学の小宮山伴与志教授らとの共同研究で、8月13日付の米科学誌The Journal of Neuroscienceオンライン版に発表した。 ヒトが歩くときの脚の運動は、脚の複数の筋肉が協調して、さらに左右の脚が