鉄を作るには高炉内の燃焼温度を高める高純度酸素が欠かせない。食品の酸化防止や半導体の製造プロセスには窒素、自動車の薄板熔接には希ガスのアルゴンなどが使用される。こうした製造業用の各種ガスは産業ガスと呼ばれ、国内最大手が大陽日酸、2位はエア・ウォーターだ。 産業ガス業界は1990年代から2000年代前半にかけて合従連衡が進み、大陽日酸(母体は日本酸素、大陽酸素、東洋酸素)、エア・ウォーター(母体は共同酸素、大同酸素、ほくさん)の2大企業が誕生。医療用途も含めた国内シェアは2社合計で7割に及ぶ。しかし、製造業の海外移転が進み、国内の産業ガス市場は頭打ちに。そこで両社はいずれも新たな収益柱を育てるためにM&A戦略を推し進め、相次ぐ企業買収をテコに業績を伸ばし続けている。 と、ここまでは同じだが、両社のM&Aには大きな違いがある。どういった企業を買収するのか。この点において2社の戦略はまったく異な