ちょっと間があいたので、他人のふんどしで相撲をとろう。 経済学はお金だけの学問じゃない。 今年の経済書で、話題性から見てもおもしろさから見ても重要性から見ても、ぼくはレヴィット&ダブナー『ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する』がダントツだったと思う。その重要性その他(そしてそれについてまるっきりピンときていないとおぼしき業界への不満)は、『論座』の書評に書いた。経済学は経済成長ばかり重視するとか、それ以外のものを見ていないのではないかとかいったことを、何やら大発見のように言い立てる人は、素人ばかりでなく、実は経済学のかなりえらい人でも(救われないことに)結構いる。そしてその指摘自体はまちがいじゃない。経済学に限らず、あらゆる分野において、新しい領域を切り開ける人は少なくて、たいがいの人はすでに確立されているもののちょっとした変奏しかできない。お金は数値化できるし、数学の道具立てを