ソクラテスの有名な言葉「悪法もまた法なり」の出典というのは、いくらさがしてもないそうである。弟子のプラトンが書き残したという事実もない。この言葉は本当にソクラテスの言葉なのであろうか。プラトン(前427-前347)がソクラテス(前470頃-前399)に出会ったのは、ディオゲネス・ラエルティオスの「哲学者列伝」によればプラトン20歳、ソクラテス56歳、前407年と推定している。一説によると、プラトンの兄のアディマントスかグラウコンがソクラテスと親しかったからといわれる。ともかく、プラトンは以後8年間ソクラテスの弟子となる。その後ソクラテスは前399年、死刑となるが、その時、プラトンは28歳だった。ソクラテスの死は、プラトンにとって哲学の原点となった。 ソクラテスの死後、プラトンは他の人々とともに、メガラのエウクレイデスのところに一時身を寄せたほか、キュレネやエジプトに旅をしたと伝えられている