さて以前のエントリで述べた不満研究事件だが、このプロジェクトのメンバーのプラックローズとリンゼイが書いた本が翻訳されるという(原著についてもわたしは未読)。この本が話題になる理由の一つには彼らがこの事件を起こしたからだろう。しかしわたしは、少なくとも不満研究事件に関するかぎり、彼らの主張の解釈にはかなり注意が必要で、きちんとした検討なしに額面通りうけとることはできないと考えている。このエントリではそれを一つの偽論文を題材にして述べる。 なおこのエントリは長くなってしまった(一万字を越えた)ので目次を付けた。 不満研究事件と偽論文の概要 偽論文は『わが闘争』とどこまで似ているか 偽論文が採択されたことはどこまで問題か 倫理的問題? 政治的アジテーション? 結論 不満研究事件と偽論文の概要 事件全体については詳しくは以前のエントリを見てほしいが、簡単に説明すると上の二人にボゴシアンを加えた三人