英語教師の美子さん(右)とは「お互い一目ぼれ」だったという佐々木孝さん=2016年、福島県南相馬市 「高みからの批判」覆し、人々の目覚め信じる 佐々木さんは上智大でスペイン語と哲学を学び、オルテガやウナムーノの研究をしながら、清泉女子大教授などとして30年余り教壇に立った。その後、故郷の福島県南相馬市に戻った。 11年の東日本大震災では、福島第一原発から25キロの自宅から認知症の妻を連れて避難できないと判断。「モノディアロゴス(独対話)」と題したブログで発信を続け、国内外の取材者や芸術家を迎え入れた。 『大衆の反逆』の翻訳を本格的に始めたのは06年、翌年にいったん訳し終えたが、震災による中断をはさんで手直しを続けた。18年12月、肺がん治療のため入院する直前、完成した翻訳の原稿を家族に託した。5日後、79歳で亡くなった。 遺稿は、佐々木さんの著書の愛読者を通じて、岩波書店に持ち込まれた。担