ちょっとした事件だった。球界随一の名手同士のコンバート。職人と呼ばれた二塁手にとって、遊撃はまるで未知のフィールドだった。あれから2年、もがき抜いた男は、再び元の聖域へと帰る。 落合さんを本気で恨みました セカンドとショートを野球の世界ではキーストーンコンビと呼ぶ。キーストーンとは二塁ベース。多くの打球がこの付近を通過し、野手と走者が知略を駆使してベースの争奪を繰り広げる。つまり二遊間はフィールドにおける要害の地である。 落合博満政権下の8年間で4度のリーグ優勝を達成した中日には荒木雅博というキーストーン・プレーヤーがいる。彼の存在なくして落合中日の躍進はありえなかった。 その荒木が落合に面と向かって、こう言ったのは落合がチームを去る直前のことだ。 「監督、本当に殺したいと思っていましたよ」 フフッと笑った落合、すぐさまこう切り返した。 「ようオマエ、泣き言言わんかったなぁ」 落合の命令で
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