投資家ならばロジャー・ローウェンスタインの『When Genius Failed』の訳本『天才たちの誤算』を読んだことがある人も多いと思うが、この本のタイトルの訳はちょっとおかしいのではないかと思う。この genius は「創造に関する非凡な才能」のことで、彼らの打ち立てた経済学的なモデルに主眼がある。しかしモデルであるのだからどこかで現実と食い違ってくる(failする)のは当たり前で、ファンドが破綻したのは、そのモデルが現実にそぐわなくなったに過ぎない。彼らは最初から最後まで誤算などしていないと思う。買うと同時に売ろうとしている債権間のスプレッドは薄く、そこからまともな収益を得るには高いレバレッジを掛けるのは当たり前で、これはアービトラージ*1で儲けようとしているのだから当然のことである。そのことを「失敗の原因」であるかのように言うのはおかしい。 日本語で「天才」と言うと、他の人が一生考