創業者の義父から後継指名を受けた直後に、義父が急逝。 気負いが空回りするが、住職の言葉で自分を取り戻す。 大黒柱だった学童用上履き事業からの撤退を決断。 老人ホームを経営する友人からの相談が発端で 高齢者向けの靴の開発に着手する。 一人ひとりに合った「パーツオーダー」の靴を提供し、 「もっと歩きたい」という高齢者の願いをかなえた。 高齢者向けの靴「あゆみ」を発売した1995年。徳武産業の社長、十河孝男はある女性から聞いた言葉が今も忘れられない。 「死ぬまでに赤い靴を履くのが夢だったが、それがかなった」。女性は水玉模様が入った赤い靴を見つめてうれしそうに言った。「この事業はきっと成功する」。そのとき十河は確信したという。 筋力の衰えや病気などによって、普通の靴ではうまく歩けないという高齢者は多い。昔からリハビリ用の軽い靴はあったが、足にぴったり合う靴になかなか巡り会えず、黒や茶など地味な色ば