mRNAワクチンの発想はシンプルだ。ワクチンがタンパク質の設計図を細胞に運び込むと、その細胞自体が実質的に極小のワクチン工場になる。そのおかげでワクチン開発者は、通常は複雑になる製造プロセスを簡素化できる。 たとえばインフルエンザワクチンは鶏卵のなかで作られているし、遺伝子工学を利用した最新型のワクチンでも、やはり生細胞内でウイルスタンパク質を作り出す必要がある。 そうした手順を迂回することで、mRNAワクチン製造企業はギアをかなりすばやく切り替えられるのだ。複数のウイルスタンパク質を含む複雑なワクチンを作ることも、比較的簡単だと考えられる。 2017年からモデルナと正式な共同研究を進めてきた、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のバーニー・グレアム所長代理は言う。 「mRNAではあらゆる面がシンプルになります。私にとって、できるだけシンプルなワクチンを作ることは進むべき道だと言えま