2018年7月26日、渋谷クラブクアトロ。KIRINJIはその夏、アルバム発表後のツアーとして福岡、大阪、名古屋と各地で公演を行い、東京にて最終日を迎えていた。2日間の東京公演は共にソールドアウト、会場には多数のファンが列を作り、そわそわと開場を待っていた。観客はみな、現行のダンス・ミュージックやヒップホップの力強い音像を取り入れた新しいKIRINJIの楽曲が、どのようにライブで再現されるのかと期待を膨らませている。もしここで安易に「6月に発表した新作『愛をあるだけ、すべて』を"ひっさげて"の公演」などと書けば、常套句やルーティンを何より嫌う堀込高樹に叱られてしまうだろう。「KIRINJIはニューアルバムをひっさげない」「『愛をあるだけ、すべて』を小脇に抱えてやってきました」と語る堀込高樹だからこそ、作品は新鮮さと意外性に満ちているのだ。 KIRINJI 夏のツアー最終日の開場時間となった