絵画についてのおしゃべりは、もちろん絵画にならない。 しかし画家だって、他人の絵を見て良いはずだし、それを見てブツクサ言ったって良い訳だ。 この本は、画家が他人の(時々自分の)絵についてブツクサ言ったそんなコトバが、当の絵とブツクサ言ってる画家のイラストその他のイラストとまざりあって出来ている。 絵解きコトバ解きの絵画史だ。 これ見たら、いままでの美術史なんか、抹香臭くて読めない。 「ベラスケスに比べれば、ティッティアーノの肖像なんて、材木に見える」といったマネは、そのベラスケスから構図や背景の処理(無背景にしてしまう)だけでなく、その黒の使い方も学んだ(比べると歴然である)。 「フェルメールにはベラスケスでさえ遠く及ばない。フェルメールには、すでに完璧なものを、なお完璧にしようとする熱狂と苦悩があった。極限を極めるために彼は何度でも書き直し、コトバがまったく無力になる奇跡に達したのだ」と